営業とマーケティングの連携がうまくいかない理由 — 「渡す条件」を決めていないから

公開 2026.09.26約5分で読めます

営業とマーケティングの対立は、人の相性ではなく設計の問題。リードを営業に渡す条件、渡した後のフィードバック、両部門の KPI の接続、そして他部署を動かすための根回しとデータ。営業組織のマネジメントとリード創出の責任者を兼ねた経験から、連携を機能させる設計を書きます。

「マーケは使えないリードばかり渡してくる」「営業はリードを追ってくれない」。この対立は、どの会社でも起きます。私はこれを、広告代理店側、広告媒体側、SaaS の営業側、そして営業組織のマネジメントとリード創出の責任者を兼ねる立場と、四つの場所から見てきました。

結論から書くと、営業とマーケティングの連携がうまくいかないのは、人の相性でも、部署の文化でもありません。「何を、どの状態で、誰に渡すか」という条件を、両部門で決めていないからです。この記事では、その条件をどう決め、どう運用するかを書きます。

対立の正体:「リード」の定義が部門で違う

マーケティングが「リード 100 件」と言うとき、それは資料をダウンロードした 100 人かもしれません。営業が「リード」と聞いて期待するのは、課題があり、予算があり、決裁者に近い人です。同じ言葉で違うものを指している限り、何件渡しても「使えない」と言われ、何件返されても「追っていない」と言われます。

私が営業組織を見ていたとき、「リードは取れているのに商談にならない」原因として最も多かったのは、インサイドセールス(IS)経由のリードでした。IS 自身がアポを取ること自体を目的にしている、スキルが足りずフィルタリングができていない、ニーズを引き出せていない。これらはすべて、「営業に渡す条件」が言語化されておらず、IS の評価がアポ数だけになっていることから起きます。マーケティングと営業の間でも、構造は同じです。

設計 1:「営業に渡す条件」を両部門で一緒に決める

最初にやるべきことは、リードを営業に渡す条件を、マーケティングと営業が同じ席で決めることです。マーケティングが一方的に決めても、営業が一方的に要求しても、運用されません。

渡す条件を決めるときの論点
  • 確認済みであるべき項目:課題の有無、時期、予算の目安、決裁への距離。すべてを求めず、最低ラインを決める
  • 確認の方法:フォームの入力か、IS の電話か、営業自身の初回接点か
  • 渡すタイミング:条件を満たした時点で即渡すのか、まとめて渡すのか
  • 渡した後の対応期限:営業は何営業日以内に接触するか

条件は厳しすぎても緩すぎても機能しません。厳しすぎるとマーケティングから渡せるリードが激減し、緩すぎると営業の時間が溶けます。最初は緩めに決めて、商談化率を見ながら締めていくのが現実的です。

設計 2:渡した後のフィードバックを、必ず往復させる

条件を決めても、渡した後が片道通行だと、条件は改善されません。営業は、渡されたリードが商談化したか否かを、必ずマーケティング(または IS)に返す。 この往復があるかどうかで、連携の質は決まります。

私が営業組織で実際にやっていたのは、次の三つです。

  1. 営業に渡す条件を、営業と IS で一緒に決める
  2. 渡された営業は、商談化したか、しなかったならその理由を、IS に必ずフィードバックする
  3. IS の評価を、アポ数ではなく商談化したアポ数を主軸にする

三つ目が効きます。評価が変わると、IS は自分でフィルタリングの精度を上げ始めます。フィードバックの往復が回り始めると、「渡す条件」の精度も現場で自然に上がっていく。マーケティングと営業の間でも、リード数ではなく商談化数(または受注に近い指標)をマーケティングの KPI に置くと、同じことが起きます。

設計 3:KPI を接続する

営業とマーケティングの KPI が独立していると、部門最適が起きます。マーケティングがリード数を追えば質が落ち、営業が受注率を追えば難しいリードを避ける。

私が勧めるのは、両部門が同じ数字を一つ持つことです。たとえば「商談化数」。マーケティングはリードの量と質で、営業は対応速度と初回接点の質で、同じ数字に責任を持つ。この一つの共通指標があるだけで、会議の空気は変わります。「あなたの部署のせい」ではなく「この数字をどう上げるか」の議論になるからです。

共通指標は一つで十分です。二つ三つ置くと、どちらの部門も自分に有利な指標だけを見ます。

設計 4:部門を動かすのは、根回しとデータ

ここまで書いた設計は、正論です。ただ、正論を持ち込んだだけでは他部署は動きません。私が横断施策を動かすときに使っていたコツは、根回し、予めの関係づくり、データで施策の重要性を説くの三つです(詳しくはクロスファンクショナルなプロジェクトを動かす方法に書きました)。

営業とマーケティングの連携で特に効くのはデータです。「渡されたリードのうち商談化したのは何パーセントで、商談化したリードの共通点はこれで、商談化しなかったリードの共通点はこれです」。この数字を相手の部門の言葉で示せると、「渡す条件」の議論は感情ではなく事実の議論になります。

そしてもう一つ。相手の部門にとってのメリットとデメリットを、自部門と同じ精度で考えること。マーケティングにとって、リード数から商談化数への KPI 変更は、短期的には数字が下がって見えるデメリットです。それを打ち消す設計(移行期間、評価の調整、成果の共有)を先に用意しないと、合意しても運用で止まります。

連携を作る手順

  1. 現状の数字を出す

    渡したリード数、商談化数、受注数を、チャネル別・期間別に出す。ここが議論の土台になります。

  2. 営業とマーケティングで「渡す条件」を一緒に決める

    最低ラインから始め、商談化率を見て締めていく前提で合意する。

  3. フィードバックの往復を仕組みにする

    営業からの結果報告を、管理ツールの必須項目にする。口頭の申し送りは続きません。

  4. 共通指標を一つ置く

    商談化数、または受注に近い指標。両部門の評価に組み込む。

  5. 月次で数字を見て、条件を調整する

    商談化率が低ければ条件を締め、渡せるリードが少なすぎれば緩める。条件は固定せず、数字で動かす。

よくある質問

マーケティングの KPI を商談化数にすると、マーケティングがコントロールできない要素(営業の対応)に評価が左右されませんか?

その懸念は正しいので、営業側にも「渡されたリードへの対応期限」を KPI として置きます。マーケティングは質、営業は速度と質。両方が同じ商談化数に責任を持つ構造にすれば、片方だけが不利になることはありません。

小さな組織で、営業とマーケティングが同じ人の場合は?

同じ人でも、「リードを獲得する時間」と「商談する時間」を分け、獲得したリードを自分で商談化率で評価します。一人でも「渡す条件」を書いておくと、後で人を増やしたときにそのまま引き継げます。

まとめ

  • 対立の正体は、「リード」の定義が部門で違うこと
  • 渡す条件を両部門で一緒に決め、フィードバックを往復させ、共通指標を一つ置く
  • IS・マーケティングの評価は、リード数やアポ数ではなく商談化数を主軸にする
  • 設計を通すには、根回し・関係づくり・データ、そして相手部門の利害への配慮が必要

営業とマーケティングの連携は、仲良くなることではなく、つなぎ目を設計することだと考えています。

REN SUZUKI

ACCOUNT EXECUTIVE, UBER FOR BUSINESS — UBER JAPAN — TOKYO。事業開発・マーケティング・営業の執行を、業務委託で担っています。プロフィール →