BtoBリード獲得施策の全体像 — 「リードは取れているのに商談にならない」を直す

公開 2026.09.21約4分で読めます

広告・SNS・紹介・イベント・アウトバウンド・インサイドセールス。BtoB のリード獲得チャネルをどう使い分けるか、リードが商談にならない典型的な原因と対処、費用対効果が最も高かったパートナー協業イベントの実例を、営業とマーケティングの両側から書きます。

「リードは取れているのに、商談にならない」。営業とマーケティングの間で、いちばん頻繁に起きる不満です。マーケティングは「リードは渡している」と言い、営業は「使えるリードが来ない」と言う。私は広告代理店側、広告媒体側、SaaS の営業側、そして営業組織のマネジメント側と、この問題を四つの立場から見てきました。

この記事では、BtoB のリード獲得チャネルの全体像と、リードが商談にならない典型的な原因、そして私が経験した中で費用対効果が最も高かった施策を書きます。

リード獲得チャネルの全体像

BtoB のリード獲得チャネルは、大きく次の 6 つに整理できます。

BtoB リード獲得チャネルの比較
チャネル立ち上がりリードの質スケール向いている局面
紹介・リファラル遅い非常に高い限定的信頼が受注を左右する商材
パートナー協業・イベント中高い中パートナーの顧客と自社の顧客が重なるとき
アウトバウンド(IS)速い設計次第高いターゲットが明確で、リストが作れるとき
広告(検索・SNS)速い中〜低高い検索される課題を持つ商材
SNS・コンテンツ遅い中〜高中指名で選ばれたい商材
自社イベント・セミナー中中中検討が長く、教育が必要な商材

どれか一つが正解ということはありません。ただ、「質」と「スケール」は基本的にトレードオフで、質の高いチャネルほど数は伸びにくい。だから多くの組織は、スケールしやすい広告やアウトバウンドに寄せて、質の問題に直面します。

リードが商談にならない、いちばん多い原因

私が営業組織をマネジメントしていた立場で見てきた中で、「リードは取れているのに商談にならない」原因として最も多かったのは、インサイドセールス(IS)経由のリードの設計と運用でした。具体的には三つです。

IS 経由のリードが商談にならない三つの原因
  1. IS 自身が「アポを取ること」を目的にしている — アポ数が KPI になっていると、商談化しないアポでも取りに行く
  2. IS のスキルが足りず、フィルタリングができていない — ニーズの有無や決裁権を確認せず、営業に渡してしまう
  3. ニーズを引き出せていない — 表面的な興味をニーズと誤認し、営業が行くと「話を聞いてみたかっただけ」になる

この三つは、IS 個人の問題ではなく設計の問題です。アポ数だけを KPI にすれば、誰でも 1 番の行動を取ります。フィルタリングの基準が言語化されていなければ、2 番は経験者にしかできません。ニーズを引き出すトークが用意されていなければ、3 番は必ず起きます。

対処:引き渡しの基準を、営業と IS で一緒に決める

私がやってきた対処はシンプルで、「商談として営業に渡す条件」を営業と IS で一緒に決めて、その条件を IS の評価に入れることです。

  • 予算・時期・決裁者・課題のうち、最低どれが確認できていれば渡すのか
  • 渡された営業は、商談化したか否かを必ず IS にフィードバックする
  • IS の評価は、アポ数ではなく「商談化したアポ数」を主軸にする

これだけで、IS の動きは変わります。フィードバックの往復が回り始めると、IS 自身がフィルタリングの精度を上げ始めます。営業組織で採用基準やトレーニングを再設計したときも、この「渡す条件」を新人教育の中心に置きました。

費用対効果が最も高かったチャネル:パートナー協業イベント

私の経験の中で、費用対効果が最も高かったリード獲得は、前職の Flywheel Digital Japan でのものです。やったことは三段階でした。

  1. パートナー企業を発掘する

    自社の顧客層と重なる顧客を持ちながら、直接の競合ではない企業をリサーチし、アプローチする。相手にとっても「自社の顧客に新しい価値を届けられる」意味があることを設計の前提にしました。

  2. 協業してイベントを開催する

    単独開催ではなく、パートナーと共同で。相手の顧客基盤に自社を紹介してもらえる形になり、集客コストが大きく下がります。

  3. イベントで登壇し、サービスを説明する

    ブースでの名刺交換ではなく、登壇して課題とサービスを直接語る。聞いた側は「誰が何を言ったか」を覚えて帰るので、その後の商談の立ち上がりがまったく違います。

このルートで得たリードは、パートナーの信頼を借りている・課題を聞いた状態で来る・担当者の顔を知っている、と三重に温まっていました。広告で獲得したリードと比べると、商談化率は別物でした。

イベント登壇は「マーケティングの仕事」と切り分けられがちですが、営業が自分で登壇し、その場で得たリードを自分で追うほうが、商談化までのスピードも精度も上がります。営業とマーケティングを分けすぎないことが、この施策のポイントです。

チャネルの組み合わせ方

私が組織を見るときに使う、チャネルの組み方の原則を三つ挙げます。

  1. 質の高いチャネル(紹介・パートナー)を、時間がかかっても一本は育てる。 これが無いと、広告費を止めた瞬間にリードが止まります。
  2. スケールするチャネル(広告・アウトバウンド)は、引き渡し基準とセットで運用する。 基準なしで数を増やすと、営業の時間を溶かします。
  3. チャネル別に「商談化率」と「受注率」を必ず分けて見る。 リード数だけを見ていると、質の低いチャネルに予算が寄っていきます。

よくある質問

リード数と商談数、どちらをマーケティングの KPI にすべきですか?

商談数、可能なら受注に近い指標です。リード数を KPI にすると、質の低いリードを量産するインセンティブが働きます。営業と合意した「商談の定義」を KPI に置くのが、両部門の対立を減らす最短ルートです。

小さな組織で、IS を置くべきですか?

リードの量が営業が自分で追える範囲なら、IS を置くより営業が自分で初回接点まで持つほうが商談化率は高くなります。IS を置くのは、営業が初回接点に時間を取られて受注活動が滞り始めたタイミングで十分です。

まとめ

  • リード獲得チャネルは 6 つに整理でき、質とスケールはトレードオフ
  • 「商談にならない」原因の多くは IS の KPI・フィルタリング・ニーズ引き出しの設計不足
  • 対処は、営業と IS で「渡す条件」を決め、フィードバックを回し、評価に入れること
  • 費用対効果が最も高かったのは、パートナー発掘 → 協業イベント → 登壇の三段階

リード獲得の問題は、チャネル選びよりも、チャネルと営業の「つなぎ目」の設計で決まることが多い、というのが私の結論です。

REN SUZUKI

ACCOUNT EXECUTIVE, UBER FOR BUSINESS — UBER JAPAN — TOKYO。事業開発・マーケティング・営業の執行を、業務委託で担っています。プロフィール →